中国の名門高校が相次いで入学定員を増やす背景にあるもの
中国で「双一流(そういちりゅう)」と呼ばれるエリート高校が、この春相次いで入学定員の拡大を発表している。複数の有名高校が募集人数を増員する動きは、中国の教育現場における深刻な競争緩和への取り組みと、地域間の教育格差拡大を巡る政治的課題の両方を映し出している。
「双一流」制度が示す中国教育の理想と現実
「双一流」は2015年に国家主導で始まった政策で、世界一流大学と一流学科の建設を目指す制度である。高等教育に限った概念だが、その理念は高校段階でも「一流校」として機能する進学校に浸透している。北京の清華附属中学(清华附中)や上海の復旦附属中学(复旦附属中学)といった名門校は、国内最難関大学への進学実績で知られ、毎年膨大な受験者を集める。これらの学校が定員を増やすのは、教育機会の平等化と地域バランスの改善を重視する中央政府の指示とみられる。
習近平(习近平)政権は教育の公平性を強調する一方で、人口減少による大学受験競争の緩和も同時進行している。少子化が進む中国では、2020年代後半には大学入試競争が急速に緩和される見通しで、高校段階での定員拡大はその前触れとされている。
地方と都市部の教育格差が招いた政策転換
中国の教育資源は都市部、特に北京や上海など一級都市に集中している。地方の優秀な学生が首都圏の名門校を志望する傾向は強く、結果として地方高校の人材流出が問題化してきた。入学定員の拡大は、これまで門前払いされてきた優秀層を吸収する一方で、都市部の学生に対する競争圧力を低減させるという政治的な配慮も含まれているとみられる。
高校の定員増加は大学進学率にも影響を及ぼす。中国では高考(大学入試)合格者数が定員で制限されるため、入学可能な高校生の増加は直接的に大学進学機会の拡大につながる。これは農村部や三四級都市の学生にとって、これまでより現実的な大学進学の道が開かれることを意味する。当局の対応が今後の中国教育格差の縮小にどう機能するか、注視する必要がある。