中国映画の「夏休み期間商戦」が消滅、エンタメ業界の構造転換が加速
中国のソーシャルメディアで「電影暑期档已经不存在了」というフレーズが話題を集めている。直訳すれば「映画の暑期興行期間はもう存在しない」という意味だが、これは中国映画界の根本的な変化を象徴している。かつて7月から8月にかけての暑期休暇は、映画館が最大の稼ぎ時だった。しかし2026年現在、その概念は急速に薄れつつある。
デジタル娯楽の急速な浸透が伝統的な興行概念を侵食
中国映画市場における暑期の地位低下は、エンタメ消費の多様化に直結している。動画ストリーミング大手のアイチーイー(爱奇艺)やテンセントビデオ(腾讯视频)は、映画館の公開初日から数週間以内に新作の独占配信を開始する交渉力を強めている。加えてショート動画プラットフォーム「抖音」(ドウイン)や「快手」の影響で、特に若い世代は長時間映画館に座るよりも断片的な映像コンテンツを消費する傾向が強まった。娯楽消費の分散化により、映画館が独占的に夏休み市場を支配する時代は終焉を迎えている。
映画館の多角化戦略も転換を促している。かつての暑期档は興行成績の大部分を占めていたが、今では周年を通じた均等な集客を目指す館も増加。国家広播電視総局(広電総局)の政策調整により、外国映画の引進に関する規制が強化されたことで、国内映画の公開スケジュール自体が以前ほど季節性を帯びなくなった。
経済的な好況感の喪失も消費行動を変える
中国経済の伸び悩みと生活コストの上昇は、娯楽支出の慎重化につながっている。かつて暑期档は家族連れが映画館に殺到する時期だったが、チケット価格の高騰(北京や上海では一枚35~50元)と共に足が遠のく消費者が増えている。学生向けの割引を廃止する映画館も多く、暑期閣の顧客層が一層限定される構造になった。農村部での映画館減少も相まって、中国全土の映画館利用の地域格差が拡大している。
こうした変化は映画制作側にも波及している。かつて暑期档の大作興行を当て込んだ大型予算映画企画は減少。代わりに配信プラットフォーム向けの製作や、年間を通じた安定した小規模公開を前提とした企画立案へのシフトが進んでいるとみられる。映画という娯楽の地位そのものが、中国社会における娯楽エコシステムの中で相対化されつつある。