中国当局が世界遺産の申報・保護戦略に新しい指針を示した。「三個有利于」(三つの有利性)と呼ばれるこの基準が、今後の遺産認定プロセスを大きく左右する可能性が出ている。文化遺産保護の透明性向上を目指す動きとして、専門家の間で注視されている。
「三つの有利性」とは何か
「三個有利于」は、有利于(~に有利)という表現を三度繰り返した方針で、通常は「有利于文化伝承」「有利于地域発展」「有利于国際交流」を指すとみられる。これらの基準により、世界遺産の申報申請の審査段階で、単なる歴史的価値だけでなく、現代社会への貢献度が評価されるようになった。中国は既に五十を超える世界遺産を保有する世界屈指の遺産国だが、申報数が増加する中で一貫した評価基準が求められていた。この新指針は、各地方政府が申報する際の判断基準を統一し、文化財の過度な商業化を抑制する狙いもあるとされる。
地方政府と文化保護のバランス
中国各地では、世界遺産登録を地域経済活性化の起爆剤と位置づけることが一般的だ。しかし観光開発が先行して、遺産本体の劣化や地域コミュニティの混乱を招く事例も報告されている。今回の新基準は、経済効果と文化保護の両立を目指す試みと考えられる。特に「有利于文化伝承」という要素は、地元の伝統知識や技能の継承を最優先することを示唆している。申報段階からこうした評価軸を組み込むことで、登録後の持続可能な管理体制づくりを事前に検証する環境が整うわけだ。
国際的な遺産戦略の転換
習近平(习近平)政権は、文化的影響力を外交資源として活用する「文化外交」に注力してきた。この新指針は、単に申報数を増やす競争から、質と責任を重視する戦略への転換を示唆している。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会でも、各国の遺産保護態勢の充実が求められており、中国もこの国際的な流れに対応する必要があった。今回の発表により、中国の世界遺産政策がより成熟した段階へ移行しつつあるとの見方が広がっている。当局の判断基準がどの程度の厳密性を持つかが、今後の焦点となる。