中国のシニア層の日常生活に関する驚くべき実態が、交流サイト(SNS)で急速に拡散している。ある高齢者が1年間のガス代を明細書で公開したところ、年間3400元超(約7万円)の請求を受けていたことが判明。ほぼガスを使用していないにもかかわらず基本料金だけで家計が圧迫されている実態が、多くの年配利用者から共感を呼んでいる。
基本料金制度の仕組みと高齢者負担
中国の都市ガス供給は日本同様に基本料金と従量料金の二重構造になっている。月々の基本料金は地域によって異なるが、沿海部の一部都市では月10元から15元程度が標準だ。年間では120元から180元が基礎となるが、実際にはガス管の検査費や施設維持費として別途費用が上乗せされるケースが多いとみられる。
このニュースで注目を集めたのは、多くの高齢者がガスをほぼ使用していない状況だ。食事は中食(購入済み食事)や惣菜で済ます、あるいは子どもたちが生活費を補助する傍で、ガス設備は接続されたまま放置されている世帯が増えている。定年後の固定費削減を求める声が強まる中、「使わないなら解約したい」という切実な訴えがSNS上で拡大している。
高齢化社会がもたらす消費構造の変化
中国の人口高齢化は世界的にも急速なペースで進行している。国家統計局のデータでは、60歳以上の人口が2030年には全体の28パーセントを超える見込みだ。都市部では一人暮らしか夫婦のみの高齢世帯が激増しており、炊事習慣の喪失や食生活の簡素化が加速している。
同時にこの層の消費意識が大きく変わっている点も重要だ。厳しい時代を経験した世代は、使わないサービスへの支払いに強い抵抗感を持つ。SNS世代の高齢者が増えたことで、かつては泣き寝入りしていた不満が可視化され始めた。基本料金制度に対する集団的な異議申し立ては、当局や事業者側にも圧力を与え始めている。
政策転換の兆し
このトレンドを受けて、各地の地方政府や都市ガス企業は対応を迫られている状況だ。広東省や江蘇省の一部自治体では、高齢者向けの基本料金引き下げや解約時の手数料廃止を検討し始めたとみられる。全国的な制度改革には至っていないが、地域ごとの柔軟な対応が広がる可能性がある。こうした動きは、高齢化への対策が経済政策の重要な課題として認識される契機となりそうだ。