中国のSNSプラットフォーム微博(ウェイボー)で、著名な男性俳優が高速鉄道の乗客の座席を占有していたとして批判を浴びている。該当の俳優は25歳で、複数の映像作品で知られる人物とみられる。事件発生当日、乗客が不当な座席占有を目撃し、その様子をSNSで投稿したことで、中国全土で議論が巻き起こった。
セレブリティの言動が厳しく監視される時代
中国では近年、著名人の不適切な行動に対する世論の目が極めて厳しくなっている。かつてはスターの私生活上の問題が報道されても大きな波紋を呼ばないケースもあったが、デジタル社会の発展により状況は一変した。微博やティックトック(抖音)などのプラットフォームでは、数時間のうちに数百万人がある話題に言及することが珍しくない。今回の高速鉄道での座席占有事件も、この構図を典型的に示している。当局は社会的悪影響を排除する方針を強化しており、スターの不品行は単なるゴシップではなく「社会秩序の破壊」として扱われるようになった。
「普通人」との関係性が重要
中国社会では「素人座位(スタンダードシート)」という言葉が日常用語となっており、公共交通機関での座席ルールが社会規範として機能している。高速鉄道は都市部の市民層が日常的に利用する交通手段で、座席を正規の乗客に譲らないことは多くの人にとって不快感を呼び起こす行為だ。特に地位や収入格差への不満が蓄積する社会では、有名人が一般乗客の権利を侵害する光景は「特権意識」の象徴として受け取られやすい。今回の事件が大きく拡散したのは、こうした階級的な葛藤が背景にあるからとみられる。娯楽産業の発展に伴い、スターと一般大衆の生活水準の差が可視化されるようになった中国では、こうした「些細な」出来事が政治的な意味合いを帯びるようになっている。
業界への波及効果
映画やテレビドラマの製作関係者の間では、キャスティングやタレント管理に関する自主規制がさらに強化されるとみられる。スターの不祥事が作品全体の評価に悪影響を与える傾向は強まっており、制作側は俳優選定の段階で「リスク管理」をより厳密に行うようになるだろう。プロダクション側からも当該俳優への公開批判が相次ぐ可能性がある。当局の処分如何によっては、中国エンタメ産業全体の自浄作用をめぐる論議へと発展する可能性も存在する。