中国の半導体産業が節目を迎えている。国営メディアが「日産チップ超15億個」という新たなマイルストーンを発表し、国内SNSで話題となっている。この数字が持つ意味は、単なる生産量の増加にとどまりません。国家戦略としての自給率向上と、米国による制裁に対抗する産業基盤の強化を象徴する出来事です。
半導体自給率向上への道のり
中国が半導体産業の独立を掲げたのは、2015年に発表された「中国製造2025」からです。当時、中国の半導体自給率は約30パーセント程度に過ぎず、先端チップの大部分を台湾や韓国、米国からの輸入に依存していました。米国がファーウェイなど中国企業への輸出規制を強化した2019年以降、半導体の国産化は急速に最優先課題へと転換されました。
現在の日産15億個超という数字は、中国が国内で生産できるチップの種類が大幅に増え、製造能力が拡大したことを示しています。ただし、先端プロセス(5ナノメートル以下)ではなく、自動車部品や家電、IoT機器向けの汎用チップが大部分とみられます。
産業政策と地方経済への波及
半導体産業の振興は、中央政府による巨額投資と地方政府による工業園区整備の結果です。武漢(ぶかん)や南京(なんきょう)、成都(せいと)といった内陸都市が次々と半導体製造拠点として開発されました。これらの都市では数兆円規模の産業ファンドが設立され、国営企業や民間企業が工場建設に踏み切っています。
雇用創出効果も大きく、エンジニアや技術者の争奪戦が繰り広げられています。賃金水準の上昇により、中国の製造業全体に波及効果をもたらしているとされます。同時に、過剰投資や技術力の格差による経営難も報告されており、業界の統合再編が進行中です。
国際競争の現実と課題
日産15億個超という成果は誇大宣伝の側面も否定できません。先端チップの製造技術では、依然として台湾の積体電路製造(TSMC)に大きく水をあけられています。米国のインテルも高性能プロセッサでの優位性を維持しています。中国国内でも、技術力と経営効率で欧米企業に及ばない企業が多いのが実態です。
こうした課題認識から、習近平(习近平)政権は資金集約的な投資に加えて、大学との産学連携強化と海外の技術者の獲得に力を入れています。2026年の現在でも、先端チップの自給率は全体の50パーセント程度にとどまっているとみられ、戦略目標の達成には時間を要する見通しです。